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日々の読書記録

子どもにかかわる人におすすめーゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち/吉川徹

著者は児童精神科医発達障害や精神的な問題を抱える子どもたちの臨床の場から、子どもとゲーム・ネットとのかかわり、そこへのおとなのかかわりについて論じている。私自身、小児科医として、というよりむしろ、ゲーム&ウオッチの時代から一貫してゲーム好きのまま成長し社会人となった今もそうである息子の親として、また自分もそれなりにゲームを楽しむ者として、うなずくところは多かった。

そもそも「ゲーム」にはどんなジャンルがあるのか、から説明されているところがいい。子どもたちが何を楽しんでいるのか、その内実をまったく知らずにかかわろうとしても一方的な決めつけにしかならないからだ。そしてゲームやネットを単純に「悪いもの」とせず、しかしまた単純にもちあげるのでもなく、困った側面にも目配りするバランスの良さも、この手の問題を扱う本ではまだ珍しいのではないかと思う。

好むと好まざるとにかかわらず、ICT化の方向はおそらく止まらないし、子どもたちは(むろんおとなもだが)そこで生きていく。だからこそ、「つきあいかた」が重要になる。ゲームやネットを使うときの約束を決めること、年齢に応じて子どもが自分で決める幅を広げていくこと、約束を決めるのは低年齢のうちからのほうがやりやすいこと、など実践的な提案も多い。また発達障害の子どもにとってのゲーム、という視点もあり、多様な子どもたちにかかわる人の参考になるだろう。

まだわかっていないことも多いということを踏まえながら、なるべく最新の「学術的にわかっていること」に基づいて書かれており、教育や保育、療育にかかわる人にも、保護者の立場の人にも一読をお勧めしたい。もっとも、著者も書いているようにこれからの保護者の年代はデジタルネイティヴになっていくので、あるいはこの分野へのとまどいは少なくなるかもしれず、むしろ祖父母世代にお勧め、と言うべきかもしれない。

 

合同出版・2021年

 

子どものこころの発達を知るシリーズ10 ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち: 子どもが社会から孤立しないために (子どものこころの発達を知るシリーズ 10)