R氏の本棚

日々の読書記録

日々をやり過ごす知恵ーぶたやまかあさんのやり過ごしごはん/やまもとしま

著者(Twitter上の知人でもあるのでそこででおなじみの「ぶたやまさん」と呼ぶ)のことを私はひそかに「Twitterの質問王」と称している。Twitterに様々な分野の専門家が生息していることは周知であるが、ニュース等で話題になった(主に自然科学分野に関わる)ものごとについてのちょっとした疑問を、ぶたやまさんは素人にも理解できる適切な表現でタイムラインに投げかけ、それに対して様々な専門家が答え、さらに再質問し、というかたちでの対話を成立させて、そのやりとりがギャラリーにとっても実に勉強になる。そうしたやりとりのまとめもいくつかつくられている。

適切な質問ができるためには、そのものごとを理解する前提知識がしっかりしていて「自分に何がわからないのか」がわかっているということと、「その疑問を適切に言語化できる」ことが同時に必要で、ぶたやまさんはその能力がたいへんにすぐれているのだと思う。

一方ぶたやまさんは3人の育ち盛りのお子さんを育てているワーキングマザーであり、その暮らしの中で生み出される料理の数々も以前からTwitterであげておられた。それらのエッセンスみたいなものがこの本だと言えるだろう。

料理エッセイ+レシピ、というつくりの、そのしょっぱなから「名もなき料理も立派な料理」とくる。これが実によい。日常を支える料理は決して立派でなくてもいいし、なんなら作るたびに味が違ってもいいのだ。何かしら料理を作ってるというだけで「料理が得意」と言っていいのだし料理のハードルは蹴倒しながら進んでいいのだ。あふれる「これでいいのだ」感が、日々なにかしら「ちゃんとした料理」を作らねば、と思いがちな私たちの気持ちをふっと楽にしてくれる。何よりエッセイもレシピも文章がすーっと入ってくる。質問力として発揮されてきたぶたやまさんの言語化能力が、ここでも十全に発揮されているということだと思う。

どこの家族でもおそらく同じだと思うのだが、私もぶたやまさんと同じように「夕食づくりにかける時間は40分〜1時間」だ。帰宅してからそれくらいで作らないと子どもたちが待ちきれないからだ。子どもが大きくなっても結局その「くせ」は身についていて、今でも(火にかけて放っておける煮込み料理は別として)1時間以上かかる料理は作らない。一方流儀が異なるところももちろんあって、よく使う鍋はフライパンと片手鍋だしワンプレートには基本しないし、そういうのは個々の家族の状況や好みや得意不得意によっていろいろだろう。

いくつものレシピが写真付きで紹介されているが、これらも「こうでなければならない」というものではなくていろいろアレンジもしやすい。私は「ぶたやまライス」を種々解体再編成してステイホームの昼食にしている。土鍋蒸しだってなんだって材料は勝手に変えていいのだ。かっちりとしたレシピ本でないぶん使い回しがしやすいと言っていいだろう。反面、料理をまったくしたことがないという超初心者には勘所がつかみにくいかもしれない、とは思うけれども。

 

ぶたやまかあさんのやり過ごしごはん 毎日のごはん作りがすーっと楽になる